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最高裁判所第二小法廷 昭和32年(オ)563号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人滝逞の上告理由第一点、第二点の一、第五点の(イ)について。

村岡覚は、本件が原審に係属していた昭和三〇年一月一二日死亡し、その父村岡登及び母ハタがその権利義務を承継したが、登も同年六月九日死亡したので、同人の権利義務をその妻である控訴人ハタとその直系卑属である他の控訴人ら(上告人を含む)が相続したことは、原審において当事者間に争のなかつたところである。当事者が死亡するときは、死亡の事実の発生とともに、当然に訴訟関係の承継を生ずるが、村岡覚には訴訟代理人滝逞があつたのであるから、本件は、訴訟関係の承継が生じたにかかわらず、手続の中断を生じなかつた場合であつて、訴訟手続を受継すべき余地はなかつたのである。かかる場合には、被相続人の訴訟代理人であつた者は、訴訟承継の結果、新たに当事者となつた相続人らの訴訟代理人として訴訟行為をなすことができるものと解さなければならない。されば、原審が手続の受継のために必要な手続をとらず、また、原判決が訴訟承継人らを当事者として表示し、亡村岡覚の訴訟代理人滝逞を訴訟承継人らの訴訟代理人として表示したことは正当であつて、論旨は採るをえない。その余の論旨は、憲法違反を主張する点もあるが、その実質は、いずれも原審が適法になした事実の認定を非難し又は証拠の取捨選択を争うに帰し、適法な上告理由と認め難い。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一)

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